<はじめに>
以下、病気あるいは障がいをもつ子どもを「同胞(どうほう)」、その兄弟姉妹を「きょうだい/きょうだい児」と表記します。
この講座は、「きょうだい児という立場で育つお子さん(高校3年生まで)」に参加していただく講座です。
※注意:この講座は、メンタルのサポートやカウンセリングや交流やコーチング、コンサルティングのみを目的とした講座は開催できません。当講座の講師は医師(小児科医)ですが、(病院ではありませんので)この講座を通して病名の診断等を含めた医療行為はできません。
<この講座では、こんなことを学びます>
■課題に多角的に柔軟に対応するクセ
この講座では、きょうだい児たちに、障がいや病気、そのほかの社会的な課題を多角的な視点で柔軟に考える力を身につけていただきます。必ずしも正解があるわけではない課題に対して、さまざまな考えがあることを学びます。そういった学びを通して、同胞との生活で抱えるさまざまな課題、あるいは世の中の問題に対応できる力を身につけてほしいと思います。
■カンタンな医学の知識
この講座では、きょうだい児に、カンタンな医学の知識も提供します。人の体は、どうやって成り立っているのか。人は、どうやって生きていられるのか。どんな病気があるのか。どんな障がいがあるのか。そもそも障がいとは何か。
そういった医学に関わる学びを通して、命や人を助けることの大切さを学んでいただきます。それは、同胞の病気や障がいを理解し助けたいという気持ちを支持し、意欲的な学習への動機付けにもなります。
お伝えしたい内容があまりにも多いことや、長いお話しですと参加するお子さん自身が疲れてしまうため、一回の講座は短時間かつ単発開催で行います。「小児科医&作家が伝える!きょうだいのためのリベラルアーツ!」講座を何回も受講いただくことで、学びを深めていただければと思います。
<なぜ、きょうだい児に限定するの?>
きょうだい児はさまざまな悩み(下記の<きょうだい児は、どんな悩みを抱えるの?>を抱えながら生活しています。病気や障がいに対する周囲の人のさまざまな捉え方に敏感です。お友だちが病気や障がいに対して否定的な意見をもっていると、同胞あるいはきょうだい児自身が否定されたかのように受け取ってしまう場合もあります。
そういったことから、きょうだい児が安心して学べる環境を提供したいと考え、対象をきょうだい児のみにさせていただきました。
<きょうだい児は、どんな悩みを抱えるの?>
例えばきょうだい児は、以下のような悩みを抱えることが知られています。
・自分も、同胞と同じような障がい/病気をもつ/もっているのではないか、という不安
・皆と同じような行動ができない同胞への恥ずかしさ
・同胞が障がい/病気をもったのは、自分が原因ではないか、という間違った罪悪感
・将来、お母さんもお父さんもいなくなったら、同胞と自分だけで暮らしていけるのだろうか、という将来に対する不安
・同胞のせいで、自分が思うような生活ができないことへの憤り/恨み
・同胞を支えるためには、自分がしっかりしないといけない、というプレッシャー
そして、きょうだい児はこのような悩みを抱えながら生活するうちに、心の不調を訴えることがあります。例えば、感情のコントロールがうまくいかなかったり(例:イライラして突然怒ってしまう)、物事に集中できない(例:勉強に集中できない→学業成績の悪化)といった、生活への不適応をきたすことがあるのです。きょうだい児自身も、どうして自分がうまく生活できないのか理解できない場合がほとんどです。
<なぜそれを学ぶべきか>
わたしが小児科医として実際に障がい児医療に身を投じて感じることは、この社会はまだ障がい児への支援が十分ではないということです。ましてやきょうだい児への支援は、さらに後回しにされてしまう現実があります。きょうだい児が問題を生じるようになってはじめて、きょうだい児へ支援が必要だった・・、と後悔することも多いのです。
しかし、考えてみてください。
きょうだい児は、成人へ成長すると、家庭と社会で大きな役割を果たします。まず家庭では、親亡き後も同胞を支えます。自分自身の家庭ももちながら、同胞も必死に支えようとするでしょう。そして社会では、その発展に貢献する貴重な人材として活躍します。少子高齢化/人口減少により人口構造が激変する日本社会を支える人材になるのです。
ですから、きょうだい児が健全に育つために支援することは、きょうだい児にとってはもちろんのこと、家庭や社会にとっても大きな意味をもつことを理解いただけると思います。
<自己紹介>
ここで、わたしのことを自己紹介させていただきます。
はじめまして、絵本『みんなとおなじくできないよ 障がいのあるおとうととボクのはなし』(日本図書センター)の作者で、小児科医の湯浅正太と申します。
わたしのことを知っていただくために、下記のYoutube動画「きょうだいとしての経験 湯浅正太 / mojiがたりシリーズ」をご覧ください。わたしのきょうだい児としての経験を語った講演会の様子をYoutube動画として公開しております。下記のURLリンクから自由に視聴できます。自由にご利用いただき、広めていただいてもかまいません。わたしがきょうだい児としてどのような悩み/問題を抱え、どのような支援により救われたのか。そして、きょうだい児支援にとって大事なものは何か。きょうだい児、そして小児科医としての経験や、きょうだいに関する研究を通してみえてくる、きょうだい児支援のあるべき姿を語っています。
▼Youtube動画「きょうだいとしての経験 湯浅正太 / mojiがたりシリーズ」
https://youtu.be/XhbEpfA7C18<きょうだいについての研究>
わたしはきょうだいについての研究(下記参照)をおこなっています。きょうだいにとってどのような支援がよいのか。小児科医として根拠をもちながら、きょうだい児への関わりを考えます。
「湯浅正太(2021):日本の障がい児/者のきょうだいの学歴,収入,主観的幸福度に関連する因子の調査,小児の精神と神経. 第61巻4号(1月号)掲載予定」